新しい読書
「この前読んだ本良かったから、読んでみない?」
この前、友人に勧められて
『アイネクライネナハトムジーク』[著]伊坂幸太郎
という小説を読んだ。
「アイネクライネナハトムジーク」とは、モーツァルトが作曲した小夜曲である。
「小夜曲」とは、 夕べに、恋人の窓下で歌い奏でられる音楽と定義されている。
学生時代の清掃の際に流れていたという方も多いのではないだろうか。
伊坂さんの本は、過去にも数作読んだことがあったため、特に抵抗もなく、すんなりと受け取った。
内容は、6作からなるオムニバス形式の短編集で、恋愛小説と呼べる(あとがきには友愛小説なんだと記述されていた)
オムニバス形式の作品を読むと、糸を作る過程みたいだなと思う。
「蚕が出した繊維を束ねあげて、糸はできるんだ」と昔、祖母が言っていた。
細い繊維が何重にも絡み合い、やがて一本の太い糸となる。
全体を通して言えば
「野球や本、人生もきっと同じで、色々な予期せぬことが重なり合って、一つの形として出来上がるのかな」なんて考えさせてくれた本だった。
前後の短編での人間関係が重なり合い、最後の短編では全てがつながる。
読後は、一種の爽快感のようなものを感じた。伊坂さんはこういった伏線回収が特徴らしい。
僕の小説の選び方は、基本的には「自分が読みたい!」と思うか否かという感情に任せている。
気になる題名の本を手に取り、最初の一行と最後の一行を読む。これは、医学部の友人が僕に教えてくれた技だ。こうすることで、大体の雰囲気はつかめるらしい。
僕はいまだその境地にはたどり着けていないけれど。
自分が読みたいと思った本でないと、僕はなかなか読み進めることができなかった。
一度、先輩からこれを読めと10冊くらい押し付けられたことがある。読む気にならなかったので、謝罪と返却に後日、伺ったのだが、その際、ネチネチと怒られた。
「人から借りといて読まないとは何事か」
と一言怒ってくれれば、「僕が悪い」の一言で切り替えられるのだけれど
「俺としてはお前の為を思って」だとか、遠回しに私生活はこうあるべきだと強要までされると、嫌な感情は尾を引く。
その時「流れに身を任せず、ちゃんと断ろう」と確固たる決意を固めていたのだが、
今回、そんな僕に、友人は新しい読書の仕方を教えてくれた。
過去の経験から学ぶことも多いけれど、それが今の自分の邪魔をするなら捨て去ってしまえばいい。
少なくとも、友人が紹介してくれなければ、僕はこの本と巡り合うことはなかったと思う。
こういう読書も悪くない。むしろ良いものだ。
感謝の言葉と共に、僕のおすすめ本を友人に渡したのは、押し付けなのだろうか。
先輩。今度、本借してください。
p187行5
「 自分が正しい、と思いはじめてきたら、自分を心配しろ、って」
チャイコフスキー:弦楽セレナード/モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジー
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